アメリカのような工学部は日本で成立するか?

前回につづいて、日本の工学部についてです。アメリカのような、企業と密接に結びついた真の「工学部」になることは可能でしょうか?そうなるべきかどうかは一旦置いておいて、可能かどうか考えてみます。昼食のときに、メーカーからきている方にいろいろ聞いてみました。それらの意見を含め考えた結果が以下のものになります。

 

まず、メーカーと密接な関係を築く際に問題となる点を列挙してみます。

(1)日本の大学教員の性格:自分がやりたいことをやる、という文化が浸透しており、企業のニーズとあわない。

(2)ドクターやポスドクのなり手が少ない。:これは日本が終身雇用制であることが原因の一つだと考えられます。新卒採用を逃すと就職の幅が狭くなるので、学生がドクターに進みたがりません。

(3)現在の大学教員の評価が論文に偏っていること。メーカーとの契約には守秘義務などがつきものであり、論文を書く妨げになる場合があります。

(4)現在はメーカーからの大学への研究投資は割とアメリカに集中しているが、そもそもメーカー側の研究受託の需要がそれほどない可能性がある。その場合アメリカの大学との競争になる。アメリカの大学は学費も高く寄付による設備投資も充実しており、対等に戦うのは困難。

 

また、逆にアメリカの工学部の問題点として、研究が長続きしないという意見をいただきました。企業からの受託研究やプロジェクト資金に頼っているため、これが途絶えると部署ごと消滅する場合もあります。裏を返すと、日本の理学部的工学部のメリットの一つはここにあるんでしょうね。定年まで同じテーマを貫く方も結構いらっしゃいます。

 

今のところまだ自分の頭の中も整理できていない状態です。なんとなく、どちらかに偏りすぎないほうがよさそうな気がします。今の日本の工学部は理学寄りに偏りすぎている気がします。

工学部

教授などから話を聞く限り、アメリカの工学系の教授はほとんどの人がメーカーと共同研究をしているようです。日本では、周囲を見るかぎりはそうでもない方がたくさんいます。少なくとも、メーカーからの資金が研究資金の大半を占めている、という人はあまりいない気がします。私自身もそうです。

 

こういったことから、現在の日本の「工学部」の問題点が見えてくる気がします。日本の工学部はほぼ「理学部」化しているのではないか、ということです。研究内容の多くが、現象を観察することを主眼に置いたものになっています。

 

こうしたことを招いている原因の一つが、資金の配分の仕方にあると考えます。大学研究者にとって重要な資金源の一つに「科研費」があります。実験計画を研究者が自ら立案し、研究者同士の評価(ピア・レビュー)によって配分を決定する科研費はきわめて理学的な資金配分法といえるのではないでしょうか。

 

より工学的な配分手法を考えるとしたら、次のようになると思います。まず、大方針として、開発すべきもの仕様を決定します。材料でも、機械でも、プログラムでも、何でも構いません。次に、それを開発するために必要な新技術、技術的課題を洗い出します。そうしたのちに、その技術課題の解決方法について公募を募ります。

 

ただ、前にも述べた通り、物事には必ずいい面と悪い面があります。理学部化した工学部にもなんらかのメリットがあるのかもしれません。

 

私はどちらかというと「工学」よりの考え方を持っています。メーカーから信頼され、多くの資金を供給してもらえるような研究者(あるいは大学)になるにはどうすればいいのでしょう?いずれメーカーの方とじっくり話し合ってみたいです。

多様性について

アメリカに来ると、「多様性」というものについていろいろ考えさせられます。今はやりの「ダイバーシティ」というやつです。

 

とにかくアメリカは多様な社会です。したがって、基本的に人は人、自分と他人は違っていて当たり前、という考え方が広まっています。ここが日本とアメリカの最も大きな違いの一つだと思います。多様な社会のメリットとしては、新しいアイデアが生まれやすいという点があると思います。アメリカにノーベル賞受賞者が多いのもこの点が理由の一つでしょう。

 

日本は(少なくともアメリカと比べると)画一的な社会です。なんにせよ、画一的であることを好みます。この点で日本の教育システムは問題がある気がします。あまりに画一的すぎる。全国均一で同じレベルの教育内容を要求します。これまでの、高度成長期などにおいてはこのような教育システムが有効に作用していたのかもしれませんが、社会が成熟した今、何らかの変革が必要な気がします。文部科学省主体ではない、自発的な、多様性を生むような変革です。

 

多様化について考えていると、いろいろ混乱する部分も出てきます。例えば私の今回の海外研修は、国外での研究生活を通じて多面的な思考を身に着けることが目的になっているわけです。しかし、みんながみんな海外研修をしなければならない、というわけではないと思います。私は国内で自分の道を貫く、という人がいてもいいわけですよね。そうした考え方を認めるのが多様性でもあるわけです。

 

また、私は物事には必ずいい面と悪い面があると思っています。「多様性」にも悪い面があるはずです。あるいは画一的であることにも何らかのメリットがあるはず。画一的であることのメリットってなんでしょう?効率?例えば画一的な教育においては、同じ教科書をバンバン刷ればいいので、確かに効率はいいです。他に何かないでしょうか?

ファインマン

大学の博物館的なところで、リチャード・ファインマン展をやっていました。

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太鼓

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ナンバープレート。「U」が抜けてますが、当時のカリフォルニア州のナンバープレートが6文字までだったからだそうです。

ファインマンは航空宇宙工学にも関係があります。スペースシャトルチャレンジャー号の事故のとき、事故調査委員をやりました。状況を丸く収め、シャトルの開発を早く再開しようとするほかの委員と対照的に、ファインマンは事故の原因を徹底的に追求しようとしました。ファインマンの意見は結局、事故の最終報告書の付録に「少数意見」として掲載されました。この報告が秀逸です。日本語の文庫も出ていますので、特に宇宙開発にかかわる人たちにはぜひとも読んでいただきたいです。大規模な開発プロジェクトにおいて、どうやって事故が発生していくかについて書かれています。

 

日本では2003年にHIIAの6号機が打ち上げに失敗するという事故がありました。実はこの事故、チャレンジャー号のケースと極めてよく似ています。事故に至るまでのプロセスについてもそっくりです。いつかどこかでこの話をしたいなと思っています。

Zipcar

Zipcarというカーシェアリングサービスを利用してみましたので報告します。

Zipcarを利用するには、まずは登録が必要です。インターネット経由で、年間登録料$70です。Caltechメンバー用の専用サイトがあり、そこから登録すると$15で済むと書いてありましたが、うまくいきませんでした。最初のひと月はタダらしいので、とりあえず使ってみました。

 

登録すると、Zipcardというカードが送られてきます。他の方のブログには「無事故証明書」というのを提出しなければならない、といったことが書かれていましたが、私の場合必要ありませんでした。免許書とパスポートのコピーは必要です。それから誓約書みたいなのもサインして、スキャンして送付しました。4,5日でアパートにカードが届きました。

 

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駐車場所

車を使うときはスマホで予約します。1時間$10くらい、30分単位で予約できます。時間が来たら、車を取りに行きます。写真はCaltech構内にあるZipcar専用の駐車場所です。路上駐車ですが、もちろん許可を取ってるんでしょうね。車はZipカードをかざすと鍵が解除され、中に入るとエンジンキーが置いてあります。ちなみにガソリンはZipcar持ちで、車内に専用カードが置いてありガソリンスタンドで自由に給油できます。

 

今日はちょっと遠くの日本食スーパーまで行ってみました。水とか買うときはどうしても車が欲しくなります。そういったときに短時間で利用できるZipcarは非常に便利です。デメリットとしては車が多少汚いことでしょうか。レンタカーと違って、毎回清掃が入るわけではありません。たまには清掃してくれているんでしょうか。

ゲッティセンター

ゲッティセンターに行ってきました。ゲッティセンターはサンタモニカの手前にある、広大な敷地を持つ美術館です。

 

パサデナからはゴールドラインでユニオン駅まで行き、EXPO線に乗り換えます。ユニオン駅では空港へ向かうときに乗る、ブルーラインの工事が始まっていました。ブルーラインはしばらく使えません(2019JUN-SEP)。日本からの観光客にもかなり影響しそうです。EXPO/ Sepluveda駅でEXPO線をおり、バスでUCLAを通ってゲッティセンターへ向かいます。

 

ゲッティセンターは山の上にあります。山のふもとから、トラムで山頂へ。

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トラム

この美術館、彫刻や絵画もすごいのですが、一番おもしろかったは建物そのもの。5つの展示館が渡り廊下で複雑に接続されており、迷路のようです。外に設けられている庭園も見事。周りの風景にうまく調和している気がしました。

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テラス

展示品は、ヨーロッパの一流の美術館と比べられると厳しいですが、建物、庭園に関してはヨーロッパの美術館にはないものがあり、興味深いです。

 

デビットカード

ユニオンバンクからデビットカードが届きました。

 

ユニオンバンクは非常に便利です。2008年から三菱UFJグループの子会社となっており、日本でも口座を作ることができます。日本にいるときに以下のことをやっておくといいと思います。

(1)まず、三菱UFJの口座を用意する。

(2)次に、ユニオンバンクの口座を作る。

(3)ユニオンバンクのカードを「デビットカード」に変更する。

(4)三菱UFJからユニオンバンクに送金する。

 

(2)の口座を作る際や(4)の送金は三菱UFJのインターネットバンキングサイトから申し込みが可能です。特にデビットカードは日本にいるうちに作っておくといいでしょう。私はアメリカに来てからカードを作ったのですが、カードは郵送で送られてきます。この時、アメリカの郵便がどうも信用ならない気がするんですよね。書留(?)のような、受け取りのサインとかは一切なく、普通に郵便ポストに投函されます。アマゾンの荷物とかも一緒で、玄関に放置していくので、少々不安があります。再配達は一切ありません。

 

まあ、十分な限度額のあるクレジットカードを複数枚持っていれば問題はありません。ただ、現金が欲しくなった時にユニオンバンクが便利です。支店がCaltechのすぐ近くにあります。クレジットカードは店側に手数料がかかるようで、古くからやっている店などで(例えばCaltechの南側のハンバーガー店)現金が必要になります。

 

とにかく普段はクレジットカード、デビットカードですべて事足ります。スーパーなどでも現金で払っている人はあまり見かけません。日本も早くこうならないかなあ。