パサデナを離れる

半年の滞在もとうとう明日で終わりです。

 

昨日は"The athenaeum"というCaltech内にある会員制のレストランで送別会を開いてもらいました。ここは2階がホテルになっていて、アインシュタインが滞在中に宿泊していたそうです。ぜひ一度行ってみたかったので、感激です。

 

実験もなんとかデータを取るところまで行きました。最後に片づけて帰ろうとしたら、教授から「私が続きをやるので片づけないでくれ」と言われました。日本ならば定年退職しているような年齢の先生なのですが、研究に対する意欲はいまだ衰えません。すごい!

 

今回の滞在では本当にいろんなことを学び、そして考えさせられました。思えば学生時代、JPLを有するCaltechにいってみたいな、となんとなく思ったのが始まりでした。20年の時を経てこういう形で実現することができ、うれしい限りです。

シアトル、ボーイング工場見学

シアトル郊外のエベレットという町にあるボーイングの工場の見学に行ってきました。

今回は路線バスを利用してエベレットまで行きました。「地球の歩き方」には路線バスは少々難しいと書いてありますが、シアトル版のSUICAORCAカード」と、Googleマップさえあればなんとかなります。ここでもGoogleマップが大活躍です。

 

まずはシアトルタコマ空港からダウンタウンへ。LAと同様のライトレールという電車が走っています。空港の駅でORCAカードを買うことができます。入口(2階)でタップして3階のホームへ。タップする場所がわかりずらいので気を付けてください。私はLAでは電車の中で1度も車掌に出会ったことがありませんが、シアトルでは2回も切符をチェックされました。必ずタップしてから乗りましょう。

 

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ORCAカード。ORCAはシャチのことです。

次にGoogleマップに従って、ダウンタウンから512のバスに乗りました。私はInternational District/Chainatown Stationでのりかえましたが、512のバスは電車と並行して走るのでここ以外でも大丈夫。512のバスは高速に入り、Lynnwood Transit Centerに到着します。ここはいわゆるバスターミナルになっており、多くのバスが発着します。ここから113のバスに乗ります。107でもいいようです。とにかくGoogle師匠に従いましょう。

 

45分ほどで、ボーイング工場の西側、Hwy 525 & 84th St Swのバス停に到着します。バス停についたらバスの中のヒモを引いて止まってもらいます。Googleマップをじっくり見て通りすぎないように注意しましょう。

 

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交差点

上の写真はバス停のある交差点です。2019年9月現在、タコベルとセブンイレブンがあります。ここから工場のある東側に向かって、坂を上っていくと、15分くらいでボーイングの工場にたどり着きます。なんだかんだで3時間近くかかります。やっぱり観光会社のシャトルバスのほうが便利かもしれません。

さて、工場についたらまずはFuture of Flightという展示館が見えてきます。ここがツアーの発着場所になります。

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Future of Flight

 

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Entrance

中にはシアターと、ちょっとした展示が並んでいます。カフェもあり、サンドイッチなどで軽めの食事をすることも可能です。ツアーの時間まで、展示を見て時間をつぶします。マジックミラーを駆使した超音速風洞の模型など、割と見ごたえがあります。

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超音速風洞

時間が来たらシアターの前で集合します。工場見学はカメラやスマホ、カバンなどの持ち込みは禁止です。入口にコインロッカーがありますので預けてから集合場所へ行きましょう。ロッカーが空いていない場合もありますが、前のツアーが終わると一気に空くので大丈夫です。まずはシアターでちょっとした映像を見てからバスで工場見学ツアーへ。

 

世界最大の建物というだけあって、確かにでかいです。飛行機も流れ作業なんですね。777は3台、787は4台並べて順番に組み立てていました。

 

シアトルにはこのほかにも「The Museum of Flight」という航空博物館があります。これはタコマ空港の近くにある「ボーイングフィールド」という別の空港の脇にあります。こちらは航空機の展示がすごい!特に第2次世界大戦で使われた戦闘機のラインナップが充実していました。コンコルドや歴代のボーイングの旅客機もあります。

 

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Museum of Flight

 

シアトルはロサンゼルスと違って緑が豊富。海もきれいです。観光に訪れるならぜひシアトルをお勧めします。

Caltechについて

今日教授と話をしたときに、Caltechについてのいろいろな興味深い情報を聞き出すことができました。記録の意味も込めてここに書いておきます。

 

<資金源について>

Caltechはどうやって3:1という低いStudent-Faculty比を維持しているのか?という質問をしてみたところ、次のような答えが返ってきました。まず、Caltechは$3x10^9=約3000億円というとてつもない基金を運用しています。これの運用益で毎年150億円くらい得られるとのことです。この基金の出どころはどうなっているのか聞きましたが、100年前のことなのでわからない、との回答でした。また、例えば私の研究室の教授は「the C. L. "Kelly" Johnson Professor 」という肩書を持っているんですが、これはKelly Johnsonさん(スカンクワークスのボスだそうです)が寄付をした基金から給料をもらっていることを意味しているそうです。そんなこんなでCaltechは年間$750Mの予算を学費に全く頼らずに集めており、結果として人件費に困ることはないんだとか。

 

<どうやって教員を選ぶか?>

「論文の数はまったく気にしていない」ということです。これには驚きました。とにかく、どれだけ独創的な研究ができそうか、という点だけに集中してセレクションをするそうです。推薦状やインタビュー、過去の論文の内容などが委員会で慎重に評価され、最後は学部レベルで投票して合否を決める、とのことでした。

 

<教員の研究分野はどうやって決めるか?>

最近GALCITでも純粋な航空工学をやっている人はあまりいません。そこで上記の質問をしてみたところ、「MITなどライバルとなる大学と分野が被らないようにして、その分野で1位になれるようにする」という興味深い回答が返ってきました。これは小規模なCaltechに独特な考え方かもしれません。

 

<学生をどのように選ぶか?>

まずはGREで高得点が必要なことは当然です。「よい研究者になれそうか?」という観点から、エッセイなどを慎重に評価するそうです。基本的にドクターに行くことを前提に採用するとのことでした。なお、日本の修士課程からの編入ができるかどうか聞いてみたところ、基本的には修士博士の一貫教育になっている、制度的には不可能ではない、との回答でした。いずれにせよCaltechですのでよほど優秀でなければ無理でしょう・・・

ドジャースタジアム

日本から来客があり、一緒にロサンゼルス観光しました。

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California Science Center

カリフォルニアサイエンスセンター。スペースシャトルエンデバーが展示してあります。写真は水槽を傾けて、渦を観察することができる装置です。

 

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Dodger Stadium

ドジャースタジアムアメリカ初の黒人プレイヤー、ジャッキーロビンソンの像があります。彼の背番号42は全MLBチームで永久欠番となっています。

 

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Game

試合中の様子。7時開始で、開始直後は写真のように割と空席が目立つのですが、回が進むとかなり埋まってきます。年間シートを購入している人が多いそうです。

 

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Karman Meeting Room

Caltechのメンバーと研究交流会を開催しました。写真はプレゼンをしたカルマン・ミーティングルームの天井。カルマン渦になっています。この他にもカルマンにまつわる展示がいろいろとあります。

残り1か月

今回の滞在も残すところあと1月。先週、家族が日本に帰りました。帰る直前に、アナハイムのディズニーランドに行きました。リトルワールドのアトラクションが屋外スタートだったのはびっくりしました。個人的にはソアリンとアナ雪のミュージカルが良かったです。

 

研究のほうでは装置の設計を終えて工作室に発注し、完成するのを待っている状況です。帰るまでにデータが取れるか、心配になってきました。

 

英語もようやくまともに会話ができるようになってきました。会話ができると話す機会も増えて、加速度的に上達していく感覚があります。

Caltechの特徴

アメリカに来て5か月目になり、徐々にCaltechについての理解が深まってきました。

 

気づいたのは、ここは日本でいうところの一般的な「大学」ではない、という点です。以下に、いろいろな大学のStudents/Faculty Ratio (SF比)を示します。出典はU.S.newsのWebサイトです。

 

Caltech          3:1

MIT                3:1

Stanford        4:1

Princeton       5:1

Harvard         6:1

USC              8:1

UCLA            18:1

UCLongBeach  24:1

San Diego State 27:1

 

CaltechとMITの SF比は3:1と極めて少なくなっています。このSF比に加え、学内には大量のポスドクや技術職員がいるので、ぱっと見ほとんど学生がいません。要するに、学生の教育が機関の主目的ではないのです。日本でいうと東大の生産研などに類似している気がします。基本的に外部の企業や政府援助の研究の受注機関であり、ついでに学生の教育もやっているといったイメージです。ですから、教育を主業務とする日本の地方国立大学などをCaltechと比較するのは見当違いです。そもそも目的が違います。

 

研究外注機関としてのCaltechを支えているのは大学院生とポスドクです。ポスドクに関しては以前も書きましたが、終身雇用制でない点がポスドクというシステムをうまく作用させているように感じます。新卒で就職しても、既卒で就職しても差がないので、それじゃあ企業に行く前にポスドクでもやってみるか、という気になるのでしょう。日本でポスドクまで行ってしまうと就職先がかなり絞られてしまいます。また、アメリカに根付いている寄付の文化もこのシステムを支えている一つの要因でしょう。メーカーも、直接利益につながらないような研究に関しても投資をためらわないように思えます。

 

以上のように日本の大学とは異なるCaltechですが、もちろん学ぶべき点も多くあります。今のところ強く感じるのは「多様性」を大切にする文化です。柔軟なカリキュラムや異分野の研究者間の交流を大切にする点などはぜひ日本の大学でも導入したい気がします。

エンゼルス、アイオワ

家族が来てからというもの、予想通りブログの更新が滞っています。

研究のほうも実験装置を製作しており、いろいろと忙しくなっています。

 

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エンゼルス

アナハイムエンゼルススタジアム。大谷が出ていました。外野には火山があり、ホームランが出ると噴火するみたいです。

 

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アイオワ

戦艦アイオワ。でかい。長さだけなら大和より大きいです。ロングビーチに停泊しています。

 

4か月が経過し、最近では当初感じていた異国にいるという緊張感も抜け、なんだか日本にいるのと変わらない感覚になってきました。不思議な感覚です。英語は相変わらず苦労していますが、すくなくとも緊張しなくなりました。

 

研究のほうでは学部学生と協力して実験装置の製作を進めています。アメリカでもミスミを発見!ミスミはアルミなどの金属材を切って送ってくれるので、大変重宝します。一部の計測機器の納入が月末になるとのこと。残りあと2か月。果たしてデータを取って評価するところまでいけるんでしょうか?